暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)は23日、8万1500ドル前後で推移している。21日夜に8万4808ドルまで上昇した後、22日の米国時間に売りが膨らみ、一時8万1000ドルを割り込む場面があった。22日の下落率は約3%と、約2週間ぶりの大きさとなった。

背景にあるのは、米メタ・プラットフォームズの決算をきっかけとしたAI関連株の急落だ。ハイテク株から流出した資金は米国債に向かい、米10年債利回りは4.95%と9月23日以来の5%割れとなった。金利の低下は通常ならBTCの追い風になるが、今回は安全資産への逃避による低下で、BTCは株式とともに売られた。

米メタ決算でAI関連株が急落

米メタが22日に発表した7〜9月期決算は、売上高が市場予想を約2%上回った。それでも株価は6.98%下落し、時価総額は1日で約1240億ドル減った。AI関連の支出がかさみ、キャッシュが10年以上ぶりに流出に転じたためだ。2026年の設備投資見通しは1350億〜1450億ドルに引き上げられ、リースなど将来の支払い義務は約8250億ドルと、7月時点の約7000億ドルから膨らんだ。

メタは議決権のない新たな株式を発行する計画も示した。借入だけでなく株式でもAI投資の資金を集める必要があることが意識され、AI投資の採算と資金繰りへの不安が、新興のAIクラウド企業から大手にも広がる形となった。

売りは半導体株に集中した。米ラムリサーチが21日に示した10〜12月期の売上高見通しは市場予想並みにとどまり、物足りないと受け止められた同社株は22日に9.8%安となった。米AMDは8.1%安、米マーベル・テクノロジーは8.7%安となり、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は6.7%下落した。6月23日以来の大きな下げで、6月22日の最高値からは26%超下落している。ナスダック総合指数は2.6%安と、6月以来の下落率となった。

東京市場もこの流れを受けた。23日の日経平均株価は取引開始直後に1445円安の6万1462円まで下げ、取引時間中としては7月31日以来約3カ月ぶりに6万2000円を割り込んだ。その後は200日移動平均線(約6万1400円)の手前で下げ止まり、東京エレクトロンやソフトバンクグループに押し目買いが入った。終値は215円安の6万2693円と、7月30日以来の安値水準ながら下げ幅を大きく縮めた。韓国総合株価指数(KOSPI)も一時4%超下げた後、0.30%高で引けた。

22日の値動きを並べると、米10年債利回りは19.3ベーシスポイント(bp)低下し、ナスダックは2.6%安、金現物は1.1%安、BTCは約3.3%安だった。成長への警戒から金利が低下する一方、株式とBTCはそろって売られた形だ。BTCの下げはナスダックより大きく、半導体指数よりは小さかった。AI・半導体株の調整が始まった前週は、BTCの下げは株式より小幅にとどまっていたが、22日はその底堅さが見られなかった。

ETFから6億ドル超が流出

需給面では、現物ビットコインETFの資金の流れが1日で反転した。SoSoValueによると、22日の純流出額は6億3549万ドルで、10月で最大の1日の流出となった。ブラックロックのIBITが2億5405万ドル、フィデリティのFBTCが2億1746万ドルの流出で、2本で全体の約74%を占めた。ARK・21シェアーズのARKBも1億943万ドルの流出だった。

19〜21日の3日間には計約10億7500万ドルが流入しており、21日だけで5億2840万ドルと約1カ月ぶりの大きさだった。流入をけん引したIBITとFBTCが、翌日にはそのまま流出の中心となった。10月の累計は再び流出超に戻ったとみられる。純資産総額は1047億1000万ドルで、BTCの時価総額の6.41%に当たる。

先物市場では買い持ちの整理が進んだ。22日の清算額は約4億3100万ドルで、約6割が買い持ちだった。市場心理を示すFear & Greed Index(alternative.me)は23日に50と、前日の68から18ポイント下がり、「強欲」から「中立」に戻った。21日までは価格が8万5000ドルを抜けないまま市場心理だけが強気に傾いていたが、今回の下落でその偏りは解消された形だ。

マイナー採算は分岐点に接近

マイナー(採掘事業者)の採算も厳しさを増している。CryptoQuantによると、ネットワークの計算能力(ハッシュレート)は22日時点で1000EH/s(1ZH/s)に達し、2025年末の最高水準に近づいた。16日の難易度調整は5.92%の上昇で、難易度は140.58Tと過去最高を更新した。計算能力が増えるほど、同じBTC価格でも1台当たりの採掘収入は減る。

ビットコイン保有企業では、Strategy(MSTR)が22日の取引序盤に5.6%安と、BTCより大きく下げた。同社は19日に、12〜18日に267BTCを追加購入し、保有量が84万8517BTCになったと開示している。平均取得単価は7万5446ドル。メタプラネット(3350)は保有4万4000BTCで上場企業の世界2位につけるが、企業価値が保有BTCの価値を下回る状態が続いている。

今後の注目点

当面は8万〜8万4800ドルのレンジでの推移が続くとみられる。上値は21日夜に付けた8万4808ドルで、ここを上抜ければ8万5000ドル台への回復が視野に入る。

来週は日程が集中する。28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、CME FedWatchで据え置きの確率が約84%と、利上げは見送られるとの見方が優勢だ。焦点は12月以降の利上げの道筋で、ロイターの調査ではエコノミスト100人全員が12月の利上げを予想した。29〜30日には日銀の金融政策決定会合がある。ドル円は22日朝の158円台から156円台に円高が進んでおり、株安と円高が同時に進めば、低金利の円で資金を借りて他の資産に投じる取引の巻き戻しにつながる可能性がある。

AI関連の信用不安が収まるかも焦点となる。米CoreWeave(コアウィーブ)の2032年満期債の利回りは19日時点で14.9%と高止まりし、メタの5年物CDS(債務不履行に備える保険料)も22日に過去最高を付けた。28日にはSKハイニックス、29日にはサムスン電子が決算説明会を控える。CoreWeaveの社債が額面の7割を割り込むなど信用不安が広がれば、AI関連株とともにBTCにも売りが及びやすいだろう。

中東情勢も引き続き重荷となる。米国は、親イラン武装組織フーシ派の攻撃が続くサウジアラビアから、緊急要員以外の政府職員と家族の退避を命じた。米国とイスラエルが11月3日の中間選挙後にイランへの攻撃を再開する計画を策定したとも報じられている(トランプ大統領は選挙前の攻撃を否定)。北海ブレント原油先物は23日に1バレル113ドル台と、5月上旬以来の高値を付けた。原油高は物価と金利を通じて、BTCの上値を抑える要因となりそうだ。