• ブテリン氏、イーサリアムは「暗号学的ワールドコンピュータ」へ進化
  • 2027年予定のヘゴタが最後の通常フォークとなる可能性

質的に異なるシステムへ

イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は27日、ブログ記事を公開し、イーサリアムが将来的に「暗号学的ワールドコンピュータ」へ進化するとの見方を示した。従来の「ブロックチェーン」という枠には収まらなくなるという。

同氏によると、イーサリアムは2009年にサトシ・ナカモトが創ったビットコインと多くの点で同じ技術だが、この15年でブロックチェーン技術は大きく進化したという。今後3年間で予想される進化を踏まえると、イーサリアムが目指す姿は「質的に異なる種類のシステム」と呼ぶのが妥当だと述べた。

現在のイーサリアムは、汎用的な計算能力、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)、ゼロ知識証明(ZK)を利用したオンチェーンアプリケーションに加え、スケーリングとプライバシーを担うL2を備える。今後は、極めて高いスケーラビリティと完全な汎用性のバランスを調整できる計算能力、複数の参加者によるブロック構築、高度に最適化されたPoS、ベースレイヤーに組み込まれたゼロ知識証明などが加わるという。

ブテリン氏は、ビットコインのホワイトペーパーの各セクションを2015年、2025年、2030年のイーサリアムと比較したうえで、ブロックチェーンの中核的な性質はほぼすべて根本的に変化したか、今後変化すると指摘した。

  • ブロック検証:全データをダウンロードして再計算 → PeerDAS(データ可用性サンプリング)とSNARK検証
  • コンセンサス:PoW → PoS →さらに最適化されたPoS
  • ブロック構築の権限:単独マイナー → 複数参加者によるブロック構築

こうした変化により、検証、コンセンサス、ブロック構築権限というブロックチェーンの中核となる性質が根本から変わる。ブテリン氏は、現代の暗号ネットワークを、サトシ時代の中核的な考え方と、2009年時点では未成熟だった強力な暗号技術を組み合わせたハイブリッドな構造だと説明している。

イーサリアム財団がL1の実行・合意・データの全層で量子耐性を2029年12月までに実現する目標を掲げた。「グラムステルダム」から五回のアップグレードで完了する計画だ。

ユーザーにとって何が変わるのか

ブテリン氏は、将来のイーサリアムでは、アプリケーションの計算処理をどう構成するかによって、ユーザーが負担するコストが大きく変わると述べた。

単純なブロックチェーンでは、データ量やガス代が一律に扱われる(1バイト=1バイト、1ガス=1ガス)。将来のアーキテクチャでは、不透明な単一のトランザクションとして直列に実行するのではなく、並列処理やプルーニング(不要データの削減)が可能な形式に分割・カプセル化することで、大幅に計算コストを抑えられるようになるという。

このコスト構造の変化は、開発者のインセンティブに影響を及ぼし、イーサリアムに関連するアプリケーションの構造にも変化をもたらす可能性がある。同氏は長期的に、状態を変更する処理と、その処理の順序に直接関係する情報だけをオンチェーンに記録し、それ以外の情報はブロックに取り込む前に集約するプログラミング・パターンへ収束するとみている。

分散化がパフォーマンス上の強みに

ブテリン氏が最も重要な変化として挙げたのは、ネットワークの分散性が、単なる「安全性・堅牢性のための負担」から、一部の用途ではパフォーマンス面の強みへと変わりつつある点だ。

分散型ネットワークでは、大量のデータを並列に保存でき、多くの場合メムプール内で大量の計算を並列実行できる。また、データやリクエストの発信元などのメタデータを隠せるため、プライバシーの向上にもつながる。

これは、2010年代半ばからイーサリアムが描いてきた「分散化を安全性だけでなく、スケールの拡大にも活用する」という構想に通じる。中央集権型システムが複数の参加者で処理を分担して性能を高めるのと同様に、分散型ネットワークでも分担は可能だという考えだ。ただし、当時は分担した処理が正しく実行されたかを検証する仕組みがなく、実現は難しかった。

同氏は、分散化がレイテンシー(遅延)の改善にもつながるとみる。イーサリアム自体がサーバー並みの低いレイテンシーを実現することは難しいが、周辺に構築されるインフラによって補完できると考えている。

具体的には、ユーザーとブロックチェーンの間に、チェーンではない強力な分散レイヤーを設ける。これにより、イーサリアムの基本的な特性を損なわずに、性能を高められる可能性があるという。

さらに将来は、難読化技術(iO)によって、プライバシーと汎用的な計算能力のトレードオフを解消できる可能性もある。もっとも、これはさらに先の技術で、ブテリン氏は、今回示した変化の多くはiOの実用化前に進むと説明している。

ヘゴタが最後の「通常のフォーク」となる可能性

ブテリン氏は、イーサリアムの長期ロードマップ「ストローマップ(Strawmap)」に触れ、2027年に予定されるヘゴタ(Hegotá)は、2015年当時の開発者にも理解できる「通常の」フォークとしては最後になる可能性があると述べた。

ヘゴタ以降は、再帰的STARK、形式検証の自動化、高度に最適化されたコンセンサスアルゴリズム、量子耐性などの導入が中心になる。同氏は、PeerDASの導入によりイーサリアムは単なるブロックチェーンから、はるかに強力な存在へと変貌を遂げ始めたとし、この変革がヘゴタ以降の主要なテーマになると説明した。

最終的な到達点は、従来の技術では実現が難しかった、低コストでスケーラブルかつプライバシーに配慮した、安全性の高い計算基盤だ。ブテリン氏はこの姿を「暗号学的ワールドコンピュータ」と表現している。

イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が、今後3〜4年かけて進める「Lean Ethereum」構想の最新ロードマップを公表した。量子耐性暗号への移行やプライバシー保護を最優先課題に掲げる中、ステートの変更が最も大きな変革をもたらす部分となると述べた。