• 民主党大勝ならクラリティー法案の成立がさらに遠のく
  • 予測市場カルシで民主党の下院奪還確率は94%

中間選挙と規制

米国の中間選挙は日本時間3日午後8時ごろに投票が始まり、民主党が下院に加えて上院も制する「ブルー・ウェーブ(青い津波)」となれば、トランプ政権と共和党議会が進めてきた仮想通貨業界に友好的な法案の審議は停滞し、議会の関心は政権や業界への調査・監視へ移る可能性がある。米投資銀行TDコーエンなどが分析した。

クラリティー法案を巡っては、下院が2025年7月に294対134で可決したものの、上院では9月15日の採決で審議入りに必要な60票に届かず、49対50で否決された。選挙後に続く現議会の残り会期(レームダック会期)は2027年1月3日までで、成立の見込みは低く、予測市場ポリマーケットのトレーダーたちは否決を受けて年内成立の確率を6.5%に引き下げた。

法案の先行きを左右する選挙を前に、現在の議席数は下院が共和党218議席に対して民主党214議席、上院が共和党53議席に対して民主党系47議席と、共和党が両院で僅差の多数派を占める。予測市場プラットフォームのカルシでは、3日時点で民主党が下院で多数派になる確率は94%、上院で多数派になる確率は76%とされる。

予測市場で民主党がリードする中、TDコーエンのワシントン調査グループのジャレット・セイバーグ氏は、民主党が上下両院を制す「青い津波」となれば、クラリティー法案はさらに停滞し、仮想通貨業界にとって最も厳しい展開になると分析した。この場合は、クラリティー法案への反対を主導してきたエリザベス・ウォーレン上院議員が上院銀行委員会の委員長に就く見通しで、ウォーレン議員がSEC・CFTCといった規制当局に厳しい監視を向ける可能性が高いとの見方も示した。

議席数が分ける影響

民主党は下院で過半数を握れば委員長ポストと召喚権限を得るが、上院で多数派になるには純増4議席が必要だ。ただし、上院で法案の審議を進めるには60票が必要で、業界に不利な法案も民主党が多数派になっただけでは成立させられない。

トランプ大統領は10月23日、民主党が議会を奪還した場合、すべての法案に拒否権を行使する考えを示したと、韓国メディアのヘラルド・ビジネスが米メディアの報道として伝えた。業界に不利な法案が議会を通っても、拒否権を覆すには上下両院で3分の2(全員出席の場合、下院290票、上院67票)が必要で、セイバーグ氏は民主党に覆すだけの票はないとの見方を示した。

法案再開の条件

また、民主党が多数派となった議会で法案審議が再開される場合、大統領を含む政府高官とその家族、関連事業者の仮想通貨関連事業を対象にした倫理規定が前提条件になる可能性が高い。ステーブルコインの利回りを巡っても、銀行預金との競合を懸念する銀行側の反対が残る。

一方、民主党が下院のみを制し、上院を共和党が維持した場合は、マキシン・ウォーターズ下院議員が投資家保護などと引き換えに法案の一部を支持する余地があり、業界にとって上下両院を民主党が制すシナリオより良い結果になるとの見方をTDコーエンは示した。なお、共和党が両院を維持する場合も、60票の壁に加え、倫理規定とステーブルコインの利回りを巡る対立が課題となる。

さらに、既存ルールのうち、決済用ステーブルコインを対象とするジーニアス法は成立済みで、2027年1月18日ごろの施行が見込まれている。米SECと米商品先物取引委員会(CFTC)の規則策定も議会審議とは別に進んでおり、民主党が影響力を強めれば議会審査法(CRA)による規則の取り消しも現実味を帯びるが、トランプ大統領の拒否権を覆す3分の2(下院290票、上院67票)に届かなければ成立しない。

解説記事:ジーニアス法とクラリティー法案の違いとは?米国の仮想通貨2大法案をわかりやすく解説【2026年最新】

米国の暗号資産規制を担う「ジーニアス法(GENIUS Act)」と「クラリティー法案(CLARITY Act)」。ステーブルコイン発行者を規制する成立済みのジーニアス法と、SEC・CFTCの管轄を整理する審議中のクラリティー法案の違いを、比較表とともに初心者向けに解説します。

ビットコインへの影響

ビットコイン(BTC)への影響を巡っては、バンエックのデジタル資産調査部門責任者マシュー・シゲル氏が、民主党が勝ってもビットコインは損なわれないとコメントした。CNBC番組でバイデン前政権はビットコインにとって悪くなかったとし、問題を抱える可能性があるのはそれ以外の仮想通貨かもしれないと話した。

バンエックは9月の投資見通しで、ビットコインは財政・金融環境が主な材料となり相対的に堅調とする一方、それ以外のデジタル資産はクラリティー法案の進展や、取引所・分散型金融(DeFi)・ステーブルコインの報酬に関する規制の明確化に左右されると区別した。

また、米資産運用大手ブラックロックのデジタル資産責任者ロバート・ミッチニック氏は以前のインタビューで、中間選挙が米国の財政赤字や債務水準への市場の関心を再び高める可能性があるとし、この懸念をビットコインの最大の材料に挙げた。

調査の対象と取引所の安全

民主党議会の矛先になりうるのが、トランプ大統領の家族が関わる仮想通貨関連事業だ。ワールド・リバティ・ファイナンシャルのステーブルコインUSD1やTRUMPミームコインを巡り、下院監視委員会の民主党議員らは相当額の実現益と外国関連の取引があったと推計した。

調査の手段となる召喚権限は、民主党が下院で多数派となれば委員会に与えられる。公聴会では、仮想通貨業界の政治団体フェアシェイクなどの政治資金、ステーブルコインの準備金と利回り、取引所のセキュリティーが取り上げられる可能性がある。

また、取引所のセキュリティーを巡っては、10月30日に起きたバイナンスの約1兆円相当の資産の不正流出を、TRMラボが北朝鮮系ハッカー集団「トレーダートレイター(TraderTraitor)」による攻撃と高い確度で判断し、チェイナリシスと米連邦捜査局(FBI)も31日までに同集団の関与を指摘した。この事案を巡り、CFTCのマイケル・セリグ委員長は30日のCNBCの取材で、今回の不正流出はCFTCが10月に提案した仮想通貨市場の規則の必要性を裏づけるとし、海外の取引所がCFTCに登録し、米国の市場と同水準のサイバーセキュリティー対策を受ける選択肢を提供したいと語った。

さらに、議会では、シンシア・ルミス上院議員がこの事案を受け、クラリティー法案には取引所に対して資格を持つ保管業者での顧客資産の分別管理を求める条項が含まれていると述べ、成立の必要性を改めて訴えかけた。

こうした議論の前提となる選挙結果は、日本時間4日午前8時ごろに最初の州で投票が締め切られた後、各州で順次判明する。議会の多数派は早ければ日本時間4日中に判明するが、郵便投票の集計が遅れるカリフォルニア州などの結果次第では、2022年の中間選挙のように確定まで1週間以上かかる場合もある。

北朝鮮の金与正氏は、バイナンスから60億ドル超の仮想通貨が盗まれた事件を北朝鮮の犯行としたFBIの発表に反発し、「重大な政治的挑発」と非難する談話を出した。過去最大とされる流出の経緯をまとめた。