開票進む米中間選挙。民主党勝利がもたらす「レイムダック化」と市場の反応

米中間選挙の開票が始まりました。主な接戦州の開票開始は、日本時間でミシガン州、オハイオ州、テキサス州が午前10時、アイオワ州が午前11時、アラスカ州が午後3時となっています。

選挙直前の世論調査では、民主党が下院優勢、上院は接戦か民主党がやや優勢との見方でしたが、4日13時現在、民主党が下院で過半数を取り奪還となりました。これで議会運営や調査の主導権を握るため、トランプ大統領は法案、予算を通しにくくなり、トランプ大統領への弾劾訴追も可能になります。

また、上院でも過半数が確実となり、閣僚や裁判官の人事権も通しにくくなりました。これで民主党が上下両院での奪還となり、トランプ大統領はまったく身動きが取れず、任期までの残り2年間はレイムダックとなりました。

民主党が勝利すればAI規制強化懸念から株は売られるとの見方ですが、既にAIバブル懸念で売られていることから、民主党が勝利しても株安やドル安は一時的な動きになるかもしれません。あるいは選挙が終わったことによる材料出尽くしから、下落後反転するシナリオも浮上してきています。

ただ、AI・データセンター建設などの規制強化法案も、トランプ大統領が拒否権を行使することもできるため、法案成立の可能性は低くなることが予想されます。トランプ大統領は2日、「民主党が議会の多数派になれば拒否権を連発する。私は『ミスター拒否権』になる」と話しています。

市場や投資家にとっては心理的に影響を与える可能性があるため、株高やドル高の重しになる可能性にも留意しておく必要があります。

それでも来年1月3日までは現在の議会が維持されることから、予想されない行動を取ってくることも想定されるため、マーケットの波乱材料になる可能性があります。

選挙後の焦点は「イラン再攻撃」と「中央銀行の動向」

選挙が終われば、トランプ大統領がイランに再攻撃を仕掛けるのではないかとの思惑が原油を押し上げています。3日時点ではトランプ大統領は「ノー」と答え、イランとの紛争終結に向けた交渉再開の動きを見守る意向のようです。

しかし、選挙結果によっては、議会での予算を通しやすい年明けまでにイラン紛争を終結させ、ガソリンや軽油を低下させ、2年後の大統領選挙に向けて共和党巻き返しのためにイラン再攻撃を仕掛けて来ることも予想されるため注意が必要です。

米ニュースサイト、アクシオスによると、1日、イスラエルのネタニヤフ首相が3日の米中間選挙直後にイランへの再攻撃を米国に求めたと報じています。11月27日のイスラエル総選挙では、現職ネタニヤフ首相の与党陣営が単独過半数を獲れなかったため連立政権の樹立交渉となっています。

ネタニヤフ首相は連立新政権発足までの暫定首相となりますが、連立協議が難航すれば再選挙となります。ネタニヤフ首相はイランへの攻撃で危機を演出することによって連立協議や再選挙で世論を味方につけることを狙っているようです。トランプ大統領は、ネタニヤフ首相の要請を受けて動きやすい年明けまでに政治的立場の巻き返しを図るのか注目です。

一方、トランプ大統領は、3日、ネタニヤフ首相との合意に基づき、イスラエルへの年間40億ドルの支援を今年末で打ち切ると発表しました。再攻撃は年末までの短期決戦になりそうです。

紛争が年内終結となればよいのですが、長引けば原油価格は再上昇し、円安材料になり、再び160円に迫る展開になるかもしれません。

片山さつき財務相は米中間選挙の結果や中東情勢のリスクを想定し、2日に「米中間選挙の結果を受けてマーケットに無秩序な動きや過度に投機的な動きがあれば、通貨当局として対応する。これまで日米の通貨当局が確認している覚書に沿って行動する。秩序ある為替市場であることが重要だ」と市場をけん制しています。財務省・日本銀行も米中間選挙に向けて臨戦態勢のようです。

3日の東京市場でドル円は157円台後半から158円台前半の円安となりました。海外市場では158円後半まで円安となりました。2日に米軍がイランのゲシュム島を攻撃したことが伝えられるとドル買いとなったようです。

その後、「米国とイランが核計画および凍結資産を巡り互いに譲歩へ向けた動きを見せた」との報道で原油が下落し、ドル安となりましたが、イランは米国との合意に向けた新たな展開はないとしてこの報道を否定したため、再びドル買いとなっています。市場は、中間選挙直後の中東リスクの高まりに敏感になってきています。

民主党勝利によるAI規制強化の懸念から株安・ドル安が起こると同時に、米国のイラン再攻撃からインフレ懸念が高まり、金利高・ドル高となるシナリオも想定できます。

イランへの再攻撃もそうですが、年内の米中首脳会談も注目です。11月18~19日のAPEC(中国)開催中に会談し、米中露首脳会談も予定されているようです。12月14~15日のG20サミット(米国フロリダ)でも米中首脳会談を行う意向とのことですが、まだ確認はできていません。

レイムダック化の前に、米中首脳会談で来年以降の新たな枠組みを仕掛けてくることも想定されますので、中間選挙後もトランプ大統領の行動に振り回される事態は変わらないかもしれません。

米中間選挙を無事消化した後は、中央銀行の動向が焦点になることが予想されます。日米欧中央銀行とも11月の会合は開催されませんが、それぞれ12月利上げの期待が高いようです。12月会合までに発表される物価や経済指標、イラン紛争の行方によっては利上げ姿勢に慎重になることも予想されるため、それらの動向に注目したいと思います。

米中間選挙の結果やこれらの経済指標によって、155~160円の相場が維持されるのか、インフレ懸念が高まり円安方向に振れるのか、あるいは欧米の中央銀行が利上げに慎重姿勢になり、日銀の利上げ姿勢に変わりがなければ、12月会合(※)前にレンジが円高方向に入ってくるのか注目したいと思います

※米連邦公開市場委員会(FOMC):12月8~9日
 欧州中央銀行(ECB)理事会:12月16~17日
 日銀会合:12月17~18日

まずは、4日のユーロ圏10月消費者物価指数(CPI)、6日の米10月雇用統計に注目です。