- JPYC、給付金50億円の発行に5,000回の分割と試算
- SBI VCトレード、4号電子決済手段の上限撤廃を要望
金融庁がステーブルコイン制度を議論
金融庁は2日、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(令和8事務年度)の第2回会合を開いた。議題は電子決済手段(ステーブルコイン)の制度見直しで、発行や移転にかかる100万円上限、レンディングの規制のあり方などを取り上げた。会合ではJPYC株式会社、SBI VCトレード、全国銀行協会(全銀協)の3者からヒアリングを行った。
事務局資料は、現行規制と裏付け資産、100万円の移転上限、レンディング、銀行など預金取扱金融機関によるステーブルコイン発行とトークン化預金の5項目で論点を整理した。
冒頭では7月21日公表の「成長投資を促進するための金融戦略」を引き、ブロックチェーンを基盤とする「オンチェーン金融」の推進を掲げている。同戦略は、ステーブルコインの制度的枠組みや、分散型取引所(DEX)をはじめとするDeFiのリスク低減策を検討対象に挙げる。
現行制度では、資金移動業者が国内で発行する1号電子決済手段は第二種資金移動業の登録が前提となり、為替取引1件あたり100万円の上限がかかる。USDCのような外国の電子決済手段も、取り扱う電子決済手段等取引業者に対し、移転を1件100万円以下に抑える措置が課されている。事務局はこの上限について、資金移動業者の参入を容易にする代わりに設けられた制度の趣旨を説明したうえで、あり方を委員に問うた。
レンディングについては、現状で包括的な規制が存在しないことを確認した。貸し手が事業者の信用リスクを負う構造を指摘し、電子決済手段が金銭に該当する場合は出資法の預り金規制との関係にも留意が必要だとしている。
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金融庁は、ステーブルコインについて信託型の規制を緩和し、事実上の制限となっている100万円を超えて個人が取引できるようにすることを税制改正要望に盛り込む見込み。JPYCの制限にも注目が集まる。
事業者2社が上限見直しを要望
電子決済手段型ステーブルコインJPYCを発行するJPYC株式会社は、上限が効くのは発行の段階だと説明した。事業者が管理しないウォレット(アンホステッドウォレット)間のオンチェーン移転は上限の対象外だが、自治体や企業が原資を「まとめて」JPYCに換える発行は1件の為替取引と数えられる。同社の試算では、10万人に5万円ずつ給付金を配る場合、原資50億円の発行に5,000回の分割が必要になる。
同社は見直しの方向として、受取人ごとの配分が1件100万円以下に区分できる場合のまとめての発行の扱いを整理するよう求めた。国・自治体や銀行・証券会社、本人確認済みの法人(上場法人等)などを相手方とする場合については、上限の撤廃か別枠の設定を要望している。いずれも、取引モニタリングの強化といった利用者保護措置とあわせた段階的な検討を求めた。
SBI VCトレードは、ドル建てのUSDCとRLUSD、円建てのJPYSCを取り扱う。信託型の3号電子決済手段であるJPYSCには上限がない。一方、ドル建て2銘柄には1回100万円相当の移転上限と、100万円相当を超える保有を防ぐ措置がかかり、法人のクロスボーダー送金や大口決済の引き合いに応えられていないという。同社は、日本の制度との同等性を要件とする4号電子決済手段(同社取扱銘柄ではRLUSD)について、100万円の移転・保有上限と買取り等の措置の撤廃を求めた。
同社は電子決済手段のレンディング「貸コイン」の実績も示した。10月時点の顧客からの貸出残高は2銘柄合算で約107億円。内訳はJPYSCが76.5億円、USDCが30.6億円で、USDCは100万円上限を考慮し、1募集あたりの貸出上限を5,000USDCに設定している。業規制が未定の現状について、同社は仮想通貨と同様の業規制が顧客の安心感につながるとの考えを示した。
金融庁は、9月30日に開いた「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」初会合の議事録を公表した。デジタル庁が給付金へのステーブルコイン活用を技術面から検討するほか、財務省は国債のオンチェーン対応を議論する研究会を10月8日に始動させた。
全銀協は「極めて慎重」な検討求める
全銀協は、第二種資金移動業の現行の枠組みを維持したまま上限のみを撤廃・緩和することは「極めて慎重に検討されるべき」との見解を示した。第二種は利用者資金を算定期間の末日から3営業日以内に保全する仕組みで、土日祝日をはさむと発生から保全完了まで暦日で10日を超え得る。従来型の供託を使う事業者が破綻した場合、利用者が資金を受け取るまで最低170日を要する可能性があるとも指摘した。
全銀協は、24時間移転できる電子決済手段では償還請求が短時間に集中する「デジタル・ラン」が起こりやすい点や、マネーロンダリング対策上のリスクも挙げた。高額の取扱いは認可制の第一種資金移動業で行うのが基本だとしている。預金取扱金融機関本体による1号電子決済手段の発行については、直ちに進めるべき具体的なニーズが明確になっている状況にはないとの認識を示した。